2010年04月14日

〔途中で書くのをやめた物語〕「Watch your mouth.」〔その経緯〕

最近ブログも更新せずに何をしていたのかというと、
勿論会社で働いていたわけでして、仕事が溢れかえったままの机を放置して終電で帰宅する毎日は、気分的にもちィ〜と荒んでいたんです。
何年も駅伝の様に読書し続けていたのをひと月ほど止めています。
鞄に本が無いというのは、これほど軽いものなのか!とか思っちゃったりして。でへ。
かといって、何もしていないのかというと、例のiPodで物語を書いていたんですよ。
以下、ひとつの物語を披露します。
実は、披露するほどのものではないんです。だって、書きかけのうえに、文章の整理もしてないし、途中までしか書けてないんですから。
内容も文章もぐちゃぐちゃのまま、出してみますわ。




老人がその娼婦をひろったのは、スラムの一画だった。
赤毛のロングストレートで顔の右側を隠した女は、老人の黒いリムジンにさっと乗り込むと、まるで彼の親戚でもあるかのように大きな態度で、車を進めるように促した。
黒い車は、数ブロック走ってドラッグストアの前でゆるゆると止まり、老人だけ降り、店の中から取り置いて貰っていたらしい紙袋を抱えて戻ってきた。
袋の中には女が名前だけ聞いたことがある高価なワインが揺れている。
  町外れにある丘に登ると、スラムからも見えていた屋敷の門をくぐりリムジンは止まった。
女は、屋敷の厳めしいシルエットを見ながら、我が身を囚われの乙女になぞらえ、それも面白いかと、唇の片方を上げて微笑む。
暖炉を前にワインを開ける。老人なりにロマンチックな雰囲気でも作ろうとしているようだが、女の方は、好きでもない相手に雰囲気もあったもんじゃない。しかし今夜はあまり客をとりたい気分でもない。たとえ終わりの一行がいつもの夜とおなじだとしても、この変わった趣向の長い夜を楽しむ事にした。

老人は、言語学の研究で南米に滞在した時に出逢った不思議な書物の話をはじめた。
その書物は、廃村の黴臭い地下室から出て来たのを、彼が何年も掛けて訳したものらしい。それほど分厚くない書物の訳が、なぜ何年も掛かったのかというと、ひとつには、その文が、言語学に精通している老人も知らない未知の言葉で書かれていたからである。
彼は、その知識と忍耐力をもって書物の解読に努めた。

書物の翻訳に歳月を費やしたひとつの理由は、それがある儀式で使われていたからである。
いまや一人として居なくなってしまった村人達がおこなっていた儀式とは、この世とは異なるる世界から何者かを招いて力を得るというもので、納屋ほどの広さの空間で何十人もの男女がトランス状態のまま反道徳的な行為を繰り広げたという。村に嫁いだが恐ろしくなって逃げ出した老女の証言を元に、老人は、村に赴き地下の隠し場所から書物を発見したのだ。
老人いわく、儀式に使用されたものの多くを焼いて破棄するのは、その物に残った人、或いは「人以外の何か」の気に悪戯をさせないためらしい。書物が儀式に使用されたにもかかわらず焼却されていないのは、それらの気に当てられて続けても耐えられるほどの代物であったのだろうということらしい。長年の気に塗れた書物は、彼が手配した何も知らない人々によって一言ずつ分解、分析され訳された。人々は、高額なバイト代を目の前に、IQテストのような簡単な作業をこなして帰っていった。
そうやって完成した訳本、その中に書かれてあったのは、老婆と娘の出てくるお話だった。
真夜中に眠れぬ我侭な老婆が、娘におまじないをかけてもらって眠りにつくというだけのお話である。この眠れない聾唖の老婆や肌の真白い娘というのは、なんらかの比喩であろうが、それ以上に老人を引き付けたのは、やはり訳すことができなかったおまじないの部分であった。
老人は、幾度かの「実験」で、なんら変異が無かったので、村から逃げた女の見たものは、儀式の時に使用された幻覚剤の作用によるものではなかったのかと思い始めていた。
先代の土地を売って作った資金も底をつきそうになったある日のこと、書物があった地下室の白黒写真を見ていて、壁から垂れているカーテンの色を思い出した。高い天井からおりてきているカーテンは、写真の中では黒くて影に混ざってしまっていたが、たしか、血の如き深紅だった筈。方角にして南北両方の壁に下がっていた。その裏に何かあるとおもいきや、両方ともただの板壁のみ。いや、足元に落ちていた硝子片、あれは何だったのか。

そこまで話を聞いたところで、女の意識は飛んだ。

ちくちくと肌を刺す麻布の感覚を不快に思いながら眼を開けると、そこは薄暗い一室。高い天井を見上げながら、自分が閉じ込められた事を悟った。
手前には深紅のカーテン。後ろを振り向くと、思った通りそこにもカーテンが。これは、話の地下室を再現したものだ。では、あのカーテンの向こうには何が?
恐怖より好奇心が優った状態でよろけながらカーテンの方まで歩き、一気に引いた。
そこにいたのは、薄汚い格好をした赤毛の女。おびえたような目をしている。慌てて後ずさりながら朦朧とした頭を暫くの間働かせて、ようやくそれが自分自身だと気がついた。
天井まで継目の無い鏡が聳えている。
そうなんだよ。地下室は鏡に挟まれていたのさ。
部屋の外から話しているのだろうが、声は平たく耳元で聞こえる。
君には、今までの協力者達と同じように、この地下室で儀式の再現を試みてもらう。なに、そこにある薄い書物を読み上げてくれるだけでいいんだよ。
老人の声は、優しい分だけ強制的に聞こえた。逃げ場無し。彼女には、それを読むしか選択肢がのこっていない。
読んでも何も起こらないかもしれない。ただの金持ち老人のエキセントリックな冗談かもしれない。しかし、このコントの後には何が待っているのだろう。街から離れている土地だといってもそれほどでもない。こんな手の凝った冗談が噂にならない筈がない。過去に実験に協力した者達に待ち受けていた事を想像してふるえが止まらなくなった。
さあ、なにを躊躇っているんだね。
何の薬を盛られたのか不安定な精神は、自分の土壇場での運の悪さに絶望し、おぞましいほどの諦念感に後押しされて、傍の貧相な丸椅子に置いてある書物とは言い難い古ぼけた薄い冊子に足を向けた。
両方のカーテンが自動的に大きく開き、彼方まで部屋が無限に連続して解放された。眩暈がする。閉鎖されているにも関わらず、何処からか冷気が吹いてくる。まさかとは思うが、鏡の向こうを覗いた。
さあ、読むんだ。
うわずった声での朗読が、全く反響残響の無い部屋で始まる。これでは自分の声の大きさも分からない。
しかし、短い物語が例のおまじないの部分にさしかかるとその声に応ずるように、大きな鏡は、一瞬震えると濁り、はじめに見た時より透度を増した。まるで、そこに、鏡など無いかの如く。
女は、自分の声とはかけ離れた高い声がでているのに驚いた。躁状態な声は、なにかを期待する子供のようである。
女が視界の少しだけ離れた場所に蠢きを捉えた気がして、目を凝らした。幾重か先の部屋の鏡像に、永久に繰り返されている自分自身の横から、女の胴ほどあろうかと思える鱗のあるものが這い出してきている。慌てて自分の周りを見たが、そんなものは、いなかった。再び鏡の向こうを確かめると、薄明かりの中でもぬめり続けるそれの色のいやらしさに吐き気をおぼえた。
止まらずに読むんだ。
老人が唾を吐くように素早く囁く。
乾き切った喉から、必死に声を出そうと努力をしてもか細い息が漏れるばかり。しかし、鏡の向こうのそれは、今や隠れていた頭を見せて、彼女の姿を見つけた。
その頭がどういったものか、何に近いのか。例えるならば大きな瘡蓋だ。大きな傷から出来た瘡蓋の表面上に無数の落ち着きの無い眼玉が蠢いている。黄白色の膿をずくずくと垂らしながら這い寄って来ると同時に女は自分の頭蓋の中心に棒状の塊が形成されるのを感じた。硬化したその部分が振動して音を作り出そうとしている。
それは、あの書物にあったおまじないの文言。老人が正しく音訳出来ていなかったものの、正しい発音が流れて来る。その発音通りに読み上げることが、今為すべき事だという強迫観念。震え続ける唇が勝手に開き、幼子の叫びのような高い声でおまじないを
今、自分の口から勝手に漏れてくる言葉こそあのいやらしい生き物が鏡と鏡の間をすり抜けるための呪文なのだ。鏡の奥の奥にいる自分の一人は、あれの姿に気がつかず、鏡だから当然のことなのだがじぶんと同じようにこちらを見ている。じくじくと膿を滴らせながら突然にその鎌首をもたげて、女に襲いかかった。抵抗する間も無かった。そのどこに口があるのかもわからない生き物は、鏡の向こうの彼女を蹂躙した。永く続く彼女の列から一人だけが外れて、ボロ人形のように振り回されていた。
鏡の向こうの何者かは、女に対してのみ反応する。それは、女を器として力を注ぐ。儀式の後に乱交が行なわれるのは、男達がその力を継承する為である。老人自身の男としての能力は、無くなって久しかった。これまでの実験で、そういった行為に及ばずとも、近いと思われる効果が得られる方法を見つけていた。

〔ここまで〕

はい、ここまでです。
これをiPodでツラツラと書いていて、なんぞやトラブルがあってこの文章が消えたら悲しいからと、自分のGMail宛にメール送信してびっくりしたんですよ。自分が思っている以上に文章が長くなってることに。
iPodって、画面が狭いでしょう。文の長さの感覚が掴みにくいんですよね。あと、狭いから、先に書いた内容をすぐに読み直せない。
だから、内容の食い違いがでてきてますね。
老人が本を訳すのに時間がかかった理由にかけて、本の事情を話そうとしてるですが、いつまでたっても「ひとつには」「ひとつには」と言ってますね(笑)この文章を書いてる奴もボケ老人かと。
あと、本を中心に田舎の怪しげでエロい儀式の風景を書きたいのに、気がつくと「力をもらうため」とかの理由になっちゃってるし。なんで田舎の人が「力」が必要なのかわからんし。ただただ勢いで書いてるのがよくわかりますね!
あわせ鏡の風景にしたって、はじめ「合わせ鏡ってどうみえるんだったっけ」ってな感じでかいてるから、いつまでもダラダラと文章をつなげてる。これ、違う意味で怪しいですね。
僕の文章の悪い癖で、文章の締めがいつも「〜だった。」が続いてます。これも減らさないと読めませんね。

この文章には、物語に必要なのに入れ損なっている部分がいくつかあります。
まず、娼婦の経歴。ティーンエイジの頃に父親の再婚相手宅で義祖父と関係してしまい、それを苦にした義祖父は次の朝自殺、関係に気がついた義母は逆上して虐待、顔に大怪我、家出という経緯。
これが、顔を半分隠している理由であり、老人ばかり相手にする娼婦という設定につながります。(贖罪の意もある)
で、最後は、虐待の傷(口元)が元で上手く発音出来ない彼女に変わって、いらつく老人が読み上げ、あれに喰われてエンド。
予定してなかったのですが、合わせ鏡がそれぞれ別の世界というパラレルな設定になってきてますね。そうじゃないと、最後にこの女が生き残る状況にならない、と。...でもそれじゃあアリキタリなんですよねぇ。

そんなこんなで、これを書くのはとりあえずやめました。
書いててもな〜んか気分が荒んでくるので。
あの多忙な3月にかいたものだからこうなったんでしょうな。

あと、文章が妙に長くなる原因は、考えるに、iPodのIMのせいではないかと。文章入力していくと次々と変換候補が出てくるでしょう。あれがなんだか勝手に文章を誘導して行くみたいで、変な気分。だから半分は自分が書いた感じがしないんです。早く慣れないと。
posted by tom at 09:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 短文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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