2008年04月05日

(完成してない物語)「憧憬」の二

飯豊幹夫は、O県の中央病院の大部屋に入院している。
幹夫の右足は南方の戦線で踝より下を失っており、顔も半分以上を包帯で覆ったままだ。「ミキオさん、新しい本を持ってきましたよ」
幹夫のベッドに隣の部屋の患者、梶田がやってきた。
頬に大きなキズがあるナイフのような細身の男で
それを語る事はないが実際ヤクザまがいの生活をしてきただろうと思わせるものがあるが
同世代の幹夫には何故か丁寧な対応をする。
「ああ、ありがたい。で、今度は何の本ですか?」
「八雲の『怪談』です。」
「ハーンですか。懐かしい」
「病院で幽霊の本なんざ縁起でもないが、俺たち死に損ないには仲間の話みたいなもんですからね」
そういって二人は笑った。
「そういや、もうじき俺たち追い出される噂がたってるんですけど、知ってますか?」
「それはまた、どうして?」
「なんでもピカの患者を受け入れるらしくて」
「ああ、それは仕方ないね。たくさんの人がやられたうえに病院も無くなってしまったからね。僕たちのようにのうのうと豚のように太るだけの患者は出て行く方がいいのかも」
「そうなったらミキオさんは、行く当てはあるんですか?」
「...いや、故郷の家は焼けてしまったらしい。けど一応戻ってみようと思うんだ」
「ミキオさんの田舎と言えばH県Sでしたよね。じゃあ田舎に戻るついででいいですからK港にある『りでいる』という本屋に寄ってってくださいよ」
「いいですけど、どうして?」
「実は、親の仕事を受け継いで妹がそこをやってるんですよ」
「じゃああなたも一緒に行けばいいじゃないですか」
梶田は少し視線をそらして
「こんなヤサグレ兄貴が今更のこのこと顔を出したって、向こうが迷惑するだけですから...」


夜、幹夫はベッドの中でまた例の夢を見ようと思った。
しかし、あれを見る事はできなかった。
それは「見る」というより「行く」感じだ。
あの夢を見なくなってから、自分の体から大きな欠片が落ちてしまった感じがずっと続いている。
何度も寝返りを繰り返して、仕方なくもうひとつの欠けた記憶の方をを思い出す事にした。
彼がN戦線で負傷して生死を彷徨った時、イイダという人が身の回りを世話してくれて、日本にまで帰る手配をしてくれたらしいのだが
その男の顔が思い出せないでいる。




と、ここまでしか書いておりません。
「虚が実を動かす」というテーマの物語なんですが
読みにくい文章で申し訳ない。
また続きが出来たら書きます。
posted by tom at 05:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 短文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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