2008年06月07日

短編/【ギュンター先生の不思議なゴミ箱】作:だみあん

「あ、ギュンター先生。おはようございます。
 今日も朝からゴミ箱あさりですか?」
まだ早朝の公園には人気がなく、
早朝のマラソンが日課の僕と、早朝のゴミ箱あさりが日課の
大学教授であるギュンター先生しかいなかった。
「先生、いい加減に教えてくださいよ。
 なんで先生のような方がいつもゴミ箱をあさっているんですか。
 しかも何かを持って帰るわけでなくゴミ箱を掻き分けているだけで・・。
 ただでさえ、この公園で1年前に殺人事件があったんですから、
 いくら先生だからといっていつかは疑われてしまいますよ。
 いやですよ、そうなってTVが来て
 『いや、あの先生は前から怪しいと思ってたんですよ。
  でもまさか・・・』なんてコメントするのは。」
僕の冴えないジョークにさえ微笑んでくれる笑顔が素敵なギュンターさんは
少し考えたあとにこう答えた
「・・・。やっぱりやめておくよ。君のためにもならないし」
そう言いながらゴミ箱をあさっていたギュンターさんに
僕はめずらしく食い下がってみた。
「そんなこと言わずに・・。んんっ?」
ゴミ箱をあさるギュンターさんの肩に手を乗せ、そう言った瞬間
ゴミ箱に不思議な形のものが見えた。
「そ、それは・・、いったい・・・」
ギュンターさんの肩から手を離した瞬間に
さっき見えていた不思議な形のものが見えなくなっていた。
僕はギュンターさんに聞かずに入られなかった。
 
「ふぅ〜。とうとう君にも見えてしまったかね。
 見えてしまった以上教えないといけないかな・・・。」
諦めたかのように深くため息をついた後
ギュンターさんは話し始めた。

「君がさっき見たものは【思い】なんだよ。
 この公園には色んな人が来て、その人たちは色々な思いを持っている。
 で、この公園から去るときに捨てていったり落としたりしていく思いがあるんだよ。
 その思い達がゴミ箱に集まっていて、私は毎朝ゴミ箱にある思い達を見ているってわけだ。
 ほら、もう一回私の手に触れてみなさい。
 私に触れている人はそれが見えるんだよ。」
そういってギュンターさんはゴミ箱から何かをすくって僕の目の前に差し出した。
その手を覆うように僕が手を重ねるとギュンターさんの手の中に
まばゆいばかりに光を放つ丸い玉のようなものが見えた。
「ほら、これをよく見てみなさい。
 これは昨日ここで恋人同士になった嬉しい思いが、二人から溢れてここに落ちていたんだよ。
 すごく幸せそうな光じゃないか。」
そう言われて光の玉を見てみると、確かに幸せのオーラがにじみ出ていて
見ている僕まで幸せな気分になった。
「これらは、この公園にあるから光を保っていられるんであって
 いざ公園から出してしまうと消えてしまうんじゃよ。
 だからこういう幸せなオーラのでているものをなるべく他のごみと一緒に
 捨てられないように分けているんじゃよ。」
そう言われてギュンターさんの毎朝の日課を思い出した。
「それで・・。毎朝ゴミ箱をあさっていたんですね。」
僕は手を離し、うなづきながらギュンターさんに問いかけた。
「そうじゃよ。こういったものはなかなかでないからね。
 それに幸せなものは丸く比較的軽いから余計に他のごみに混ざってしまうんじゃよ。」
ギュンターさんは手に持っていたものを大事そうにゴミ箱に戻しながらそう答えた。
「へぇ〜。重さや形はそれぞれあるんですね。」
「ん。優しく幸せな気持ちなものは丸く、怒りや悲しみといったものはとげとげしく、
 その思いに負の要素があるほど重いんじゃ。」
「そうなんですね。僕にも持てますかね?」
僕は聞いてみた。
「たぶん持てると思うぞ。触っててやるからさっきのやつを持ってみなさい。」
そういってギュンターさんは僕の肩に手を乗せた。
その瞬間ゴミしか入っていなかったゴミ箱にゴミ以外の色んなものが見えてきた。
「あ、これがさっきのやつか〜。あの二人が付き合うことになったんだ〜。
 これってその状況までわかるんですね。
 ほんと幸せな気持ちになるな〜、これは。
 ギュンターさんがこういったのを大事にする気持ちがわかる気がします。
 何かあってもこの光を浴びていると『頑張ろう』って気になりますもんね。」
振り返ってそういう僕にギュンターさんはいつもの優しい笑顔で答えてくれた。
「ほんといろんな形があるんですね〜。
 ん?なんだこのそこにある暗いやつは・・・」
僕は独り言をつぶやきながら底にある暗いものに手を触れた。
その時僕に見えたものはギュンターさんがある男の首を絞めて殺している姿だった。
あれは一年前の・・・。

その時僕の首に生暖かい感触と強い力が伝わってきた。

「私には以前から殺人願望があってね。
 一年前もつい・・・。
 で、その時に捨ててしまったそいつに触れてしまわないように
 そいつの周りを違うもので覆っていたんじゃよ。
 そいつを見てしまうとまたやってしまうんじゃないかと思ってたのに。
 でも見られてしまった以上君を生かしておくわけにはいかない。
 残念だけどね。」

【終】
Gunter.JPG

こんばんは。
だいぶご無沙汰してしまい申し訳ございません。
じつは以前に頂いていたお題を昨日一気に書いてみました。
力も衰え見るに耐えないものかもしれませんが
お目を通して頂きご意見等頂けたら嬉しいです。
あ、お題の続きと言われてたのをいま思い出しました・・・。
なのでちょっと修正しますけど意味合いは一緒です(?)


そういうわけで、ぼくがコメント欄で出した「お題」が元で
この物語はココにあるわけです。
不気味なゴミあさりという行動が、やっぱり不気味なオチに落ち着く
二転三転して面白いですね。

僕は落書きを足しただけなんだけど
物語の気持ち悪さを出そうとして、絵が気持ち悪くなってしまいました。
本当は先生の頭をハゲにしたかったのになぜか髪の毛描いちゃったり...。
ダークな物語の力のなせる技かもん。
だみあん、申し訳ない!
posted by tom at 07:48| Comment(1) | TrackBack(0) | 短文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
とむ師匠〜〜

素敵な絵をありがとうございます。
毎回言ってますけど・・・

「ください」(笑)


やっぱりとむ師匠の絵はすばらしいです。
うちに飾ってある絵もいつ見ても素敵です(^^)


またお時間ある時にお題くださいませ(^^)
Posted by だみあん at 2008年06月16日 01:09
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/99682686

この記事へのトラックバック